keimaejimaの日記

リクルートでエンジニアやってますが、ここでは情報社会論的なことを書きます

脱囚人社会へ

こんにちは、前島です。

そういえば、先日僕たちtoizに関するスレッドを某巨大掲示板で見つけました。
知名度が上がって来た結果とも言えるのですが、概してネガティブなことが書き込まれる掲示板ですので、精神衛生上あまり見ない方が良いと判断しています。 
インターネットが一般的になってから、そういった掲示板やTwitterなどの大衆SNS上で現実社会で目立っている個人や団体の欠点を指摘して祭り上げる一種の「断罪」が行われる光景がみられるようになりました。 
断罪の対象が日常生活をおくることが困難になるまで追いつめられる事例も出てきています。 

自由闊達な意見交換が行われ、民衆によって公共圏が形成され、正すべきところは正されてよりよい社会が形成される。となれば良いと思うのですが、現実はそうはいきません。
それは、断罪を行う者達が偏りなく選定された民衆でもなければ、良識を持った市民でもない、という事があるからです。
そういった「断罪」の背後には私たちの社会全体の心理傾向の変化を内包した”大きな流れ” を感じます。

 

 

大衆は権力へ能動的に服従する
フランスの哲学者ミシェル・フーコーベンサムあ考案した監獄施設「パノプティコン」を比喩に出して、「現代人は権力に主体的に服従している」と指摘しました。

パノプティコンは円形の監獄施設で、囚人の監房が円形に配置され、その真ん中に監視施設が配置されます。
監房からは監視施設の中は見えず、逆に監視施設からはすべての監房は監視することができます。

そのような構造を採用することで、囚人はいつ自分が監視されていいるのかわからなくなり、常に監視を受けているような感覚になります。

そのうちに囚人達は恒常的な監視の恐怖から、能動的に規律を守り服従するようになります。 

f:id:keimaejima:20120417110959j:plain

フーコー現代社会の大衆をパノプティコンに収容された囚人にたとえて、権力によって作られた社会システムに主体的に服従する存在として描写したのでした。

「見られている」から「見られたい」へ 

しかし、現在はフーコーが大衆を分析した時代とは随分事情が変わってきています。

社会通念の浸透により監視状態がより恒常化しただけではなく、メディアが双方向的になった事で大衆はより多くの情報を権力側に預けるようになりました。
人々はインターネットを使って日々せっせと個人情報をインターネット上にあげ続けています。
そうしている内に、人々の心理は「見られている」状態から「見られていないと落ち着かない」状態へと変化していきました。

「常に誰かとつながっていたい」「自分が今なにをしているのかを常に公開したい」 、このような欲求によって日々のできごとから些細な感情までを周知にさせています。 

 

無秩序な断罪
恒常的な「繋がりたい欲求」「知られたい欲求」は、今まででは本人やごく近しい人しか知りえなかった情報をよりオープンなものにします。

当然、その人にとっては気にも留めない些細なミスも公開されます。(もちろん重大なミスも公開されます)

そのような些細なミスは以前であれば、寛大な空気感のなか、社会的に許容されてきました。
しかし、現代ではそのような些細なミスも無限に拡散します。

その過程で良識ある市民によって意義のある忠告を受けることもあれば、社会的ルサンチマンを溜め込んだ人々によって際限の無い断罪・叱責を受けることもあります。
断罪は情報の拡散を加速させ、罪の重さは無限膨張を起こします。
つまり、以前では社会全体に共有される良識によって判断されていた罪の軽重が現代では個人レベルの価値規準によって判断されているのです。

 

囚人からの脱皮 

 フーコーが囚人の比喩を以て描写した大衆が断罪されている現状は皮肉ですね。
もちろん僕は罪を犯した人はそれなりのペナルティを受け、反省するべきであると考えています。
しかし、その量刑や罪状が良識の無い人々によって決められてしまう現状を危惧しているのです。
現代の「より多くの人に自分の行動に対する”アドバイス”を受けることができる」状況は素晴らしいと思います。 
しかしそのような状況も一人の悪意によって豹変してしまいます。
今後も個人情報が日々社会的に周知され、蓄積されていく状況は変わらないでしょう。
僕たちがお互いを囚人ではなく、同じ社会を共同体を構成する仲間として認識し、その人の情報を得た時に、怨恨のはけ口にするのではなく社会とその人自身にとってどのような応対をするのが最もよいのか、一人一人が考えられるようになったら良いですね。 

ちなみにこちらのFacebookページと連動して今後は交信していきますのでよろしくお願いします。
https://www.facebook.com/toizinc