keimaejimaの日記

リクルートでエンジニアやってますが、ここでは情報社会論的なことを書きます

「統計心理学」 勝見明

「統計心理学 書評」鈴木敏文著「統計心理学」の書評を苅谷剛彦著「知的複眼思考法」の方法論に基づいて書く。この本の主な主張は「マーケティングにおいて大切なのは、過度な現場主義にとらわれる事なく冷静に統計的な視点で顧客動向を読む事である。」本著の中での概ねの主張は筋が通っているように思える。そんな中で論理的にいくつか気になる点を述べる。
一点目は「今は多様化の時代ではなく画一化の時代である」という主張である。本著内では世の中の流行というものは色んなものが次々に流行し、人の好みが多様化しているように見えるが、趣向の分布を時系列にそって輪切りにしてみると、その時々で実は同じようなものが好まれている。よって現代は画一化の時代である、と主張されている。一見正しそうに思えるこの主張は本当に正しいのであろうか。確かに、あるタイミングで多くの人々が同じようなものを持つようになっているという主張は、実感としてうなずける。しかし、そこで多様性の規準を示さずに、人々の趣向が画一化していると論じるのは早計ではないだろうか。
たとえば現在巷ではスマートフォンを所有する人が急増しているが、それを画一化と呼んでも良いのだろうか。スマートフォンに関しては、キャリアやOS、機種、カラーなど消費者は様々な選択が出来るようになってきている。一口にスマートフォンと言ってしまえばそれまでだが、スマートフォンという一つの枠の中でも様々な趣向が働いているのである。消費者の趣向はスマートフォンが出てきたばかりの頃より明らかに多様化していると言える。つまり、規準をどこに置くのかによって趣向が画一化しているかどうかは変わってくるのでる。
二点目は「流行に乗って商売するとは“飽きられるもの”を売る事である」という主張である。この主張も一見正しいように思える。しかしよく考えてみると、世の中には流行してその後飽きられずに継続的に売れ続けているものが数多く存在する事に気がつく。たとえば、コンビニのペットボトル入のお茶などが良い例である。一昔前は、コンビニのお茶は清涼飲料水などに押されてそれほど売れていなかった。しかし健康志向や日本食のブームによりお茶は売れるようになった。これも一種の流行と言えるが、その後もお茶は売れ続けているのだ。流行した商品は必ずしも飽きられる訳ではない。一時の流行から“当たり前”すなわち日常的に消費されるものへと変化する事もあるのだ。よって流行を作り出すという事は、継続的に売れ続ける商品を生み出す事でもあるといえる。以上で書評を終える。